低学年の指導者として

・子どもと接する時に考えていること

自由に、のびのびとスポーツを

「今日は○○します!」と言っプログラムを始めると、3回目くらいに、「ねえねえ、こうやって、やってみてもいい?」という声が上がることがあります。「いいよ、やってごらん!」

意外と上手くことも、やはり失敗することもありますが、それはやってみないとわからないもん。やってみたい、と思ったことにはどんどん挑戦できる場を提供したいと思っています。

お互いを認め合い、強調性を

低学年はしばしば秘密兵器を持参します。MY作戦ブック、作戦用ミニホワイトボード、縄跳びetc.
「いいなぁ、ちょっと貸して!」「うん、いいよ」「次、オレも」という声が自然と飛び交います。土曜日にしか顔を合わせない友達がほとんどなのに、とても仲が良く、譲り合いの精神が身についていることに感心します。

よく考え、それを言葉に

「今日は作戦を考えます!」紙とペンを渡すと「よーし、オレ、ダブリバ考え る!」などと言いながら一目散にペンを 走らせます。できた作戦は、どうやって考えたのかをしっかりと聞きます。それを基に修正を入れて作戦のレパートリーに組み込むこともあります。考えたことが、実際にプレーとして形になる経験は、とても重要なことだと思っています。たとえ、その作戦が上手くいかなくても、学ぶことはたくさんあるし、次の思考への意欲となるからです。

自分の得意なことを伸ばして欲しい

人にはそれぞれ得手不得手がありま す。だからこそ、フラッグは楽しいのです。いわゆる「運動神経がいい子」だけが活躍するわけではないからです。足が遅くたって、粘り強い子は、立派なブロッカーだし、上手にボールを持っているふりをして走れる子は、作戦を成功させる鍵を握っています。

スポーツをしに来ているわけだから、足が遅い子にとっては、多少なりとも劣等感を感じる時間はあるかもしれません。しかしその分、その子の長けた点をどんどん褒め、伸ばしていこうと思っています。

・指導する立場から見た、低学年の子どもにとってのフラッグの魅力

ちょっと大人な自分?

作戦ブックを見ながら、仲間と相談し指示しあう。さすがに、公式戦では、作戦を子どもた達に一任することはありませんが、練習の時は、こういう機会をたくさん設けています。自分達で考えて行動することは、低学年の子ども達にとっては、ちょっと大人な自分を体験できる、魅力あるひと時なのではないでしょうか。

学校のみんなとはちょっと違う!

普通の小学生は、楕円形のボールの投げ方なんて、おそらく知らないでしょう。「自分達は、みんなとはちょっと違うことができるんだぜ」といった優越感を感じられるのも、魅力の一つなのだと思います。「初めて体験に来た子に教えてあげて」と言うと、みんなこぞって教え始めます。その顔は少し誇らしげで、 たくましく見えます。

・指導者として大変だったこと

大変というか、一番の悩みは、チーム内で試合形式の練習ができないことです。スタッフを相手にすることがほとんどで、腰の高さが高いために、フラッグを取る感覚を身に付けにくいのです。大会前には特に悩みの種となっています。

また、公式戦のない期間、まるっきり試合ができないことは、モチベーションをあげにくい状況を作り出してしまっているとも思います。

・指導者として嬉しかったこと

試合で作戦が上手くいった時の、嬉しそうな表情と、称えあっている様子を目にした時はやはり嬉しいです。笑顔で駆け寄ってきて「次の作戦は?」と意欲満々です。もちろん失敗したときも、ちゃんと励ませる、とてもよいチームです。

5人全員が交代なしの状態で、1日2試合することは、低学年の子ども達にとってはかなりの負担になっているだろうと心苦しく思います。しかし、転んでも涙をこらえて、「まだ頑張れる!」と試合を続行した姿を見ると、子どものたくましさに心打たれます。

そんな状況でも、全員タッチダウンができたことと、全員でそれを喜び合えたことは、とても嬉しいことです。低学年恒例のシェイクで祝杯をあげている時、私は心から彼らを称えています。気づいてくれているかな?

試合の話ばかりなので、日常の活動中の出来事も……。

先日、「低学年、集合ー!」と声をかけると、低学年チームのキャプテンが 「ハドルー!早く集まれー!」とチームメイトを呼んでくれました。それまではキャプテンとは名ばかりだな ( 笑 )、と思っていたのに、この変貌ぶりに驚かされました。「どうしたの?」と聞くと「今日からこのチームをいいチームにするの!」と、なんとも頼りがいのある言葉 が……。こういった成長を目の当たりにできる瞬間を、とても嬉しく思い、やり甲斐を感じるときでもあります。

子ども達からたくさんのエネルギーをもらい、色々と学ばせてもらっています。子ども達にとって、運動能力でも、人格形成でも、とても重要であろう年齢に携われる喜びと責任感を胸に、残された学生生活を子ども達と共に充実したものにしたいと思っています。

WILD359ers 網本淳子

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*この文章は2009年のWILD359ers作成のフリーペーパー「Take Action Project」に掲載されたものです。